『Mortal Shell』は愛と憎しみの"ソウルライク"
はじめに
フロム・ソフトウェアが世界に誇る『DARK SOULS』シリーズに影響を受けた、あるいは強いオマージュを感じさせるゲームを俗に"ソウルライク"と呼ぶ。
"ソウルライク"ゲームは本家のアクションRPGにとどまらず、様々なジャンルに派生しているが、2D横スクロールのタイプが最も多い気がする。
しかし、今回紹介する『Mortal Shell』は、パッと見で本家と見間違うほど精巧に作られた3DCGのアクションRPGである。
こういう"ソウルライク"を待っていたのですごくうれしい。
一方、本作はCold Symmetryというインディーズ・デベロッパーの開発(日本版のパブリッシャーはDMM GAMES)であり、クオリティやバグなど多少の不安要素があるのも事実。
ということで、今回はそんな期待の新星『Mortal Shell』について話します。
大まかなストーリー
『DARK SOULS』シリーズ然り『Bloodborne』然り、フロム・ソフトウェアのゲームはよくわからないなりに全貌をつかむことはできる。
それがプレイヤーの考察をはかどらせ、"フロム脳"と呼ばれる患j……信者を生み出すくらい罪深いものだった。
しかし、本作は(故意的なのか)本当によくわからない。
石碑に刻まれた碑文やアイテムのテキスト、NPCの発言など抽象的な表現や意味不明な固有名詞ばかりで、終始よくわからない。
幸いなことに、僕は『DARK SOULS』シリーズに関してそれほどストーリーを重要視していないので、仮によくわからなくても十分楽しめる素養(?)はある。
要はゲームが面白ければそれでいい、そう割り切っている。
ゲームの進め方(流れ)としては、序盤の朽ち果てた塔に"シスター・ジェネーシャ"という火防女みたいなNPCと"老いた囚人"という捕らわれた巨人NPCがいて、彼らに言われるがまま「聖なる腺」を求めてダンジョンを攻略する、という感じ。
勘のいいフロム信者はお気づきだろうが、ご想像通りのストーリーである。
相変わらず自分のない主人公である。
基本的なゲームシステム
僕はとても好きです、下手すると『DARK SOULS』シリーズより好きかも。
この記事はこれから『Mortal Shell』をプレイする、もしくは悩んでいる人が読むものと思われるので、ここからは少し細かく説明します。
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硬化
『Mortal Shell』最大のオリジナル要素として、硬化がある。
いついかなるタイミングであっても発動可能な一発限りの無敵モード。
ただ、その名の通り石のように固まるのでプレイヤーも動けない。
本作はガードがないため、攻撃を防ぎたければ硬化するしかない。
一度発動するとゲージがたまるまで数秒かかるため無駄打ちできず、タイミングは意外とシビアである。
この硬化とローリング、後述のパリィをうまく駆使することで、戦闘の立ち回りが全然変わってくるのだ。
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装備(シェル)
本作では過去に倒れた戦士の遺骸(Mortal)を殻(Shell)のように身にまとって戦う。
作中、このシェルは4種類あり、それぞれ異なる特徴を持つ。
仕える者、ハロス
一番最初に出会うシェル、ご覧の通りステータスも標準的。
目立った特性はないが、硬化に関するアップグレードが多く、実は有能。
デザインも地味ではあるけど渋くて秀逸。
探求する者、ソロモン
いずれのステータスもハロスを上回っており、使い勝手のいいシェル。
ちなみに、「決意」とは後述の強化反撃や武器アビリティに必要なゲージ。
一方、アップグレードに関してはそれほど魅力的なものはない。
尊ばれる者、エレドリム
耐久性(HP)に全振りしたシェル、ビジュアルも圧倒的にかっこいい。
一方、スタミナが少ないのでプレイヤーの管理能力が求められる。
アップグレードすることで攻撃力の底上げも可能で、戦闘に不慣れなプレイヤーにおすすめ。
従う者、ティエル
これまた極端な、スタミナ全振りのシェル。
スタミナを制する者がゲームを制す、『DARK SOULS』シリーズに精通する者なら誰でも知っている。
アップグレードすることで走るときにスタミナが減らなくなったり、攻撃に毒効果を付与したりと、ある程度慣れてきたプレイヤーにおすすめ。
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武器
武器もシェルと同じく4種類ある。
基本的には『DARK SOULS』シリーズを彷彿とさせるラインナップだが、本作オリジナル要素もあり、いずれもバランスよく作られている。
ちなみに、武器は"守護者ハダーン"と呼ばれるボスを倒すことで入手できる。
聖なる剣
最初のチュートリアルで渡されるスタンダードな直剣。
武器アビリティ(後述)によって武器が変形し、楔打ちのような一撃を繰り出す。
二段階目は、さらに敵を炎上させる。
くすぶる鎚矛
先端に火種を宿す、リーチの長いメイス。
武器アビリティによって先端が火炎をまとい、敵を炎上させる。
二段階目は、周囲を火炎によって爆発させる。
ハンマーとノミ
右手にハンマー、左手に毒を宿したノミを構える。
武器アビリティによってアクロバットな連撃を繰り出す。
二段階目は、さらにトリッキーなアクションになるが効果不明。
殉教者の剣
両手持ちの大振りもっさり特大剣。
武器アビリティによって刀身が冷気をまとうが、追加ダメージなど効果不明。
二段階目は、地面から無数の氷柱を発生させ、敵を凍結させる。
バリスタズーカ
本作唯一の飛び道具、一本装填型の弩砲。
攻撃力が高く、雑魚なら一発で倒せるし、強敵も吹き飛ぶ。
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消費アイテム
本作はアイテムを実際に使ってみないと効果がわからないという、恐ろしい仕様になっている。
また、「熟知度」というものがあり、使い込むことでさらに詳しい効果やテキストを知ることができる。
みんなにも同じ怖さを味わってもらいたいので説明は省略する。
あと、拠点となる朽ち果てた塔の裏側に商人がいるので、そこでアイテムを購入することもできる。(彼の飼い猫?をなでることもできる)
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回復方法
『DARK SOULS』シリーズにはエスト瓶というものがあり、セーブポイントに触れれば無限に使える心の支えがあった。
しかし、本作にこういったアイテムはなく、ウェルトキャップという赤いキノコ(消費アイテム)が主たる回復手段となる。
このウェルトキャップはフィールド内に自生しており、収穫から5分後に再び収穫できるため、序盤は集めまくったほうがいい。
そのほか、『DARK SOULS』シリーズよろしくパリィも存在し、これが成功すると強化反撃という技をお見舞いでき、同時にHPを回復することもできる。
これは『Bloodborne』の内臓攻撃に通じるものがあり、攻撃は最大の防御といった感じだ。
あと、一回は死んでも大丈夫。
一度HPがゼロになると強制的にシェルから剥がされて丸裸になる。
この状態で再びシェルを身にまとえばHPは全回復する。(攻撃されると即死)
そして、もう一度HPがゼロになるとゲームオーバーとなる。
なお、ゲームオーバーになるとそれまでに獲得した"ター"(DARK SOULSの"ソウル"と同義)を失うため、取り戻すためには死んだ場所まで回収にいく必要がある。
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アップグレード
本作にはレベルアップという概念はなく、『DARK SOULS』シリーズのようなステ振りもない。
その代わり、身にまとうシェルのアップグレードを行う。
これは獲得した"ター"と"一瞥"(DARK SOULSの"人間性"に近い)を消費する。
なお、シェルそれぞれにアップグレードの項目は決まっているため、プレイヤー独自の育成要素はない。
武器のアップグレード
武器もアップグレードすることができる。
4種類それぞれに特殊アイテムが2つ用意されており、それに応じて武器アビリティ(特殊技)を会得できる。
また、「焼き入れ用酸」という消費アイテムを使うことで、最大5回まで攻撃力をアップできる。
この「焼き入れ用酸」は一周で10個しか入手できないため、一周目で最大強化できる武器は2種類までとなる。
なお、各ダンジョンのボスを倒すことで得られる「聖なる腺」を"老いた囚人"にささげることで、新たな強化反撃を会得することもできる。
総評(というか感想)
まずグラフィックがきれい!インディーズとは思えない。
フィールド構成に差異あれど、本家と見比べても遜色なし、とさえ思える。
以下の記事によれば、たった15人の開発者によって制作されたとのこと。
粗さはあるにせよ、部分的にはAAAタイトルにも匹敵するクオリティがあり、そんな小規模スタジオで制作されたとは思えない。
あと、当初心配していたようなバグの被害に遭うことはなかった。
しかも、そこかしこに見て取れる"ソウルライク"要素から、本家をさぞかしリスペクトしてるのかと思いきや、以下の記事によれば、開発者はこのジャンルに憎悪を抱いていて、『DARK SOULS』シリーズをクリアしたこともないという驚愕の事実。
言われてみれば、"ソウルライク"への愛(?)と憎しみを感じるトータルデザインにも思えて妙に納得できてしまう不思議……。
キャラクターの操作性については、本家と比べればもっさり感は否めない。
最初は自分の勘が悪く死にまくったが、慣れてしまえばこっちのもの。
これはこれで悪くないと思えるし、僕はネガティブな意見はない。
だからこそ、いざというときの硬化が真価を発揮するのである。
僕のプレイ動画で少しでも操作性が伝わればうれしい。
中ボス撃破! #MortalShellhttps://t.co/nXLOFLtVut pic.twitter.com/wNbi1WGKDs
— 🈂️ラミ (@salamipizzadog) 2020年9月21日
パリィ(強化反撃)にバリエーションがあるのも好き、どれもかっこいい。
ネット上では「パリィ判定がシビアすぎて難しい」という意見も目にするが、アップデートにより改善されたようで、僕は特に不満はなかった。
あと、飛び道具のバリスタズーカの挙動がいちいちかっこいい、完全にロマン武器。
Oof pic.twitter.com/trIxguGdLm
— Mortal Shell (@MortalShellGame) 2020年9月19日
なお、本家のようなオンライン要素はないが、NPCイベントは少しだけある。
序盤マップの端っこに座り込んでいる"袋頭"に、エレドリムのシェルを装備した状態で要求されるアイテムを渡すと謎エンディングが見られる。
また、離れたダンジョンに兄弟のNPCがいて、弟にハロスのシェルを装備した状態で話しかけるとイベントが進行する。(エレドリムのシェルを装備した状態で話しかけると殺害する選択肢が現れる)
ボスはそれぞれ特徴的な動きと高い攻撃力を持ち、いずれも第二形態まであるので、習性を見定めるまでには何度か死ぬことは覚悟したほうがいい。
全体的なボリュームとしては、拠点となるフォールグリム、「聖なる腺」のために攻略するダンジョンが3か所、そしてラスボス、という感じなのでちょっぴり物足りない人もいるだろう。
僕も自称ゲーマーではあるが、限られた時間で少しずつプレイするタイプなので、正直ちょうどいいボリューム、というか値段相応。
ちなみに、僕のクリアにかかった時間は約13時間でした。
周回プレイも用意されていて、二周目は強くてニューゲームに加えて武器を10段階までアップグレードできる。(でも敵の耐久性も増えるので結局トントン)
なお、トロコンのためには、「店で50,000ター消費する」とか「一度もシェルと結合せずダークフォーム(ほぼ丸裸)でクリアする」など、それなりに過酷な条件が待っている。
いずれにしても、『DARK SOULS』シリーズが好きなプレイヤーにはおすすめだし一見の価値あり。
この手の"死にゲー"でしか体感できない緊張感や達成感をうまく落とし込んでいると思うし、お薬が足りなくなってきた患者の方にはもってこいです。
お世話になった攻略サイト
まず一つ目、こちらはマップも貼ってあってとても参考になりました。
二つ目はこちら、消費アイテムの効果やNPCイベントが書いてあって助かりました。
xn--zck9awe6d820vk6qg9be46k.com
最後にこちらの動画、各種アップグレードに必要なアイテムの場所を教えてくれました。
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PlayStation Storeだと4,378円、Epic Gamesだと3,080円で購入できます。
さあ、君もフォールグリムに降り立ち、「聖なる腺」を求めて小旅行に出かけよう!