『FINAL FANTASY XV』は傑作になるはずだった悔し涙のRPG
遅ればせながら『FINAL FANTASY XV ROYAL EDITION』(以下、FF15)をプレイしました。
はっきり言って評判の悪い本作ですが、かくいう僕もホストみたいなルックスに嫌悪感があってずっと食べず嫌いをしていました。
今回はそんなFF15に対する率直な感想を書きたいと思います。
めんどくさいのであらすじとかは省略します。
総評
先に結論から言いますと、意外と面白かったです。
その上で言いたいのは、FF15は説明不足がすぎる作品ということ。
もっとストーリーを丁寧に作り込んでいれば傑作になれたはずです。
とても惜しい、もったいない、というのが僕の素直な気持ちです。
世界設定
これはなかなか好きです。
「帝国」「魔導」「機械」などはFF6を彷彿とさせます。
「星の病」「ルナフレーナ」などはFF7を彷彿とさせます。
「父子の絆」「凪」などはFF10を彷彿とさせます。
なんと言いますか、いかにもFFやってる感があります。
国もルシス王国、ニフルハイム帝国、帝国属州テネブラエというわかりやすさ。
しかもここに戦争、停戦協定、政略結婚、裏切り、復讐といった最高のシナリオが用意されているわけで、プレイヤーの胸が躍らないはずがありません。
キャラクター
主人公と仲間以外のキャラクターは総じて好きです。
仲間は最初からいるグラディオラス、イグニス、プロンプトの3人だけです。
ストーリー上の理由はあるにせよ、これに関しては普通に残念でしたね。
でも最初は苦手だったホストみたいなルックスもどんどん慣れてきて平気になりました。
ルナフレーナしかり、アーデンしかり、アラネアしかり、みんないいですよ。
この世界で浮いているのは主人公と仲間だけですね、浮きまくりです。
バトルシステム
基本的には好きです、癖になります。
魔法がMPではなく消費タイプになってるのはFF8を彷彿とさせます。
種類もファイア、ブリザド、サンダーの3つしかないのでシンプルですね。
ノクティスのシフトブレイクもかっこいいです、飛びまくりです。
回復手段は主にポーションです、回復量が多いので終盤まで活躍します。
あと、ボス戦では仲間3人はすぐ死ぬのでほとんどノクティスのタイマンになります。
そもそもいてもいなくてもわからないくら貢献度が低いので大丈夫です(何が)。
巨大な敵と戦うときのわくわく感はすごいです、まるでスタイリッシュなモンハンです。
あと、懐かしい敵とかが最新のグラフィックで3DCG化されてるのは往年のファンとしてもグッときますね。
キャラクター育成
これはおおむね満足です。
獲得した経験値はホテルやキャンプで「宿泊」することで初めて精算されるのも面白かったです。
アビリティはFF10のスフィア盤っぽくて楽しいです。
まあ、育てたところでボス戦ではすぐ死んじゃうのであまり意味はないですけど。
不満、疑問、その他ネガティブな感想
前のブログで「ネガティブはいらない」とか言ってたくせに早速矛盾する男。
でもこれは文句ではなく、あくまで感想の一環、プレイヤーの嘆きであるということでご容赦願います。
一言で言えば、とにかく説明が足りませんよスクエニさん、というお話です。
■ 戦争に気づかないノクティス王子一行
主人公たちはテネブラエの令嬢ルナフレーナとの結婚式のために首都インソムニアを後にします。
しかし、出発早々で車がガス欠を起こし、数キロ離れたハンマーヘッドにたどり着きます。
そこからまた数キロ離れたガーディナ渡船場に移動して、ここでルシス王国がニフルヘイム帝国に裏切られ、首都インソムニアで戦争があったことを知ります。
いや、さすがに気づくでしょ。
■ 旅の目的がすり替わる
前述の戦争でルシス国王であり父親のレギスが戦死し王都は没落、クリスタルも奪われてしまいます。
そして、戦争を生き延びたコル将軍から「歴代王の墓を回ってファントムソードを集めろ」と言われます。
まあ、確かに今の俺たちじゃ帝国に勝てないしな、ということで車を走らせます。
しばらく旅を続けているとノクティスは頻繁に頭痛に襲われるようになり、突如現れた謎の男(正体は帝国宰相であるアーデン)に誘導され、頭痛の原因である巨神タイタンのもとを訪れます。
そこでノクティスは「六神(いわゆる召喚獣)の力」を手に入れるよう言い渡され、六神巡りの旅に出ます。
あれ?ファントムソードは?
■ 宿敵である帝国の人間と親しく振る舞う
旅を進める中で、帝国宰相のアーデンや帝国准将のアラネアたちと出会います。
激情家のノクティスなら、たとえ傭兵のアラネアだとしても帝国の人間と知れば即座に斬りかかってもおかしくないのに、普通に話したり一緒にダンジョンを攻略したり、謎の懐の深さを見せます。
あげくにはアイテムとか武器を売ってもらったっり、目的地まで飛行艇で送ってもらったり、至れり尽くせりです。
どういう喜怒哀楽?
■ ルナフレーナが殺される理由がない
ノクティス王子の婚約者であるテネブエラ令嬢のルナフレーナは、リヴァイアサン召喚の際にアーデンに刺されて海の底に沈んでいきます。
「シガイ」の原因である虫によって不老不死となったアーデンは、穢れた存在としてクリスタルに拒否され、王座に就けなかった過去を持ちます。(しかもそれを明かされるのは最後の最後)
そんなアーデンの目的はルシス王家を未来ごと滅ぼすことであり、そのためには六神の力を得た状態の完全体ノクティスを殺すことで目的は達成されます。
ルナフレーナは神凪として、六神に対して王子に力を貸すよう誓約する役割を持ちますので、アーデンの目的達成にとってルナフレーナは好都合な存在であり、それなのに六神巡りもこれからというタイミングでアーデンはルナフレーナを刺殺します。
もしかすると、すでにルナフレーナは六神との誓約をすべて済ませていて実質的にはもう用済みだったのかもしれませんが、それにしても説明が足りません。
■ いつの間にか壊滅する帝国軍
初登場時は七武海のような怪しいオーラを放っていた帝国軍幹部たち。
これは熾烈なバトルが待ち構えているな、と思っていたらいつの間にか全員死んでいました。
そりゃないぜ!
■ 「光耀の指輪」の扱いが雑
かつて六神が作りだし、ルシス王家に代々伝わる指輪。
ルナフレーナが死に際、ノクティスに託します。
しかし、ノクティスはその重みを背負う決心ができず、ずっと指にはめられませんでした。
その意気地のなさを仲間に叱責され、ノクティスのうじうじタイムはしばらく続きます。
その後、アーデンの策略により仲間と離ればなれとなり、武器も魔法も使えない状況に陥ります。
そのとき、ノクティスは逃げ込んだ部屋で「しょうがねえ」みたいな流れで指輪をはめます。
そりゃないぜ!(2回目)
■ ファントムソードとは
序盤で旅の目的となる、歴代王の墓に安置されたファントムソードは13本あります。
一瞬で旅の目的から関係なくなりますが、中には律儀に集めた人もいるでしょう。
僕はというと、クリア時点で9本しか持っていませんでした。
しかし、なんということでしょう!
ラスボス戦のカットシーンでなんとノクティスが13本のファントムソードで戦ってるじゃありませんか!
僕の知らない間に集めててくれたんだね!ありがとう!
■ 10年の眠りにつく主人公
前述の指輪に力を蓄えるため、真の王となるため、10年の眠りにつくようバハムートに諭されるノクティス。
そこに王たる者の人間的成長や能力向上などなく、マジで10年眠るというパワープレイ。
しかも、眠りから覚めたノクティスは口調も王様っぽくなっており、自覚や覚悟が芽生えています。
10年といえどゲーム内で数分のカットシーンを挟んだだけなので完全にプレイヤー置いてけぼり。
よっぽど強くなったのかと思いきや変わったのは見た目だけ。
っていうか、マジでファントムソードって何だったんだ。
あと、お願いだから10年後のシドニーとかイリスとかアラネアも登場させてくれ。
■ 不明瞭なバックボーン
これはほとんどの主要キャラクターに通じていえることですが、もっとバックボーンを説明してほしい。
アーデンの復讐の動機はルシス王国の初代国王までさかのぼるわけだし、プロンプトがニフルハイム帝国出身だったという衝撃の事実も流されて終わるし、グラディオラスとイグニスに関してはよくわからない。
ゲームにおいて没入感や感情移入を深めるためには、キャラクターのバックボーンは重要な要素です。
そこをないがしろにされると感情が追いつかないというか、「そうですか」としか言い様がありません。
肝心な部分がもやもやして終わってしまうのはすごくもったいないです。
■ エンディング
最後はノクティスが命を賭してアーデンを魂ごと消し去ります。
もちろん、ノクティスも死にます。
そして最後のシーン、ノクティスとルナフレーナは結婚したかのような描写で終わります。
おそらくあれは魂世界(そんなものがあるのかは不明)を描いたもので、「ノクティスとルナフレーナは天国でよろしくやってるよ」みたいな、スクエニが用意したせめてもの救いなのかもしれません。
いや、でもね、その魂世界を肯定してしまうと、死んだ父親とか執事のおじいちゃんとかの悲しみや怒りが一気に陳腐化してしまうんですよ。
「こっちで死んでも魂世界があるから」じゃあないんですよ、キャラクターの死を軽んじないでほしい。
まとめ
以上、ゲームを作れない凡人が偉そうに不平不満を吐いてしまいました。
でもこれは文句ではなく、あくまで感想の一環、プレイヤーの嘆きであるということでご容赦願います。(2回目)
総合的に僕はFF15が好きですし、とても惜しい作品だと思っています。
RPGにとって大切な「基本」を押さえていれば確実に傑作になり得た作品です。
これは感動ではなく悔しさの涙を誘うRPGでした。
開発に伴う諸事情を考えれば大変な苦労があったのもわかります。
本作に関わったすべての人たちに感謝を敬意を捧げつつ、これからもFFという素晴らしいアートフォームを作り続けてほしいと願っています。
ただしチャプター13、テメーはダメだ。
余談
これは持論ですが、DLCはストーリーに付加価値を与えるものであって、足りない部分を補完するものではありません。
100%を120%にするものであって、80%を100%にするものではありません。
グラディオラスの一時離脱、イグニスの失明、プロンプトの失踪など、DLC商法を前提としたストーリー仕立てだけはやってはいけないことだと思います。
そこに関しては残念な気持ちでいっぱいです。
でもアラネア姐さんは最高でした、ありがとうございました。