salamipizzablog

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大丈夫、世界はまだまだ面白くなる

GTAのイースターエッグを数えてるうちに終わる短い夏

これは平成の呪いだ。

エモいなんて言葉では表しきれないほどの哀愁。

おれは野崎りこんの領域展開にまんまと囚われた。

 

おれは野崎りこんの熱心なファンではないし、過去の音源も『野崎爆発』を聴いたことがある程度。

電波少女の初期メンバーってのも知らなかった。

だから今回はあくまで『We Are Alive EP』の感想にとどめる。

野崎りこんというアーティストを紐解くほどの何かをおれは持ってない。

全然見当違いなこと書いたら本人に失礼だろうし、これはただの個人的な感想。

 

 

おれは野崎りこんの年齢も知らない、だけどおそらく同年代だろう。

歌詞の節々でそれを感じる。

たぶんおれたちはだいぶ似通った半生を経験してる。

 

冒頭にも書いたがこれは平成の呪いだ。

たまにツイッターで見かける平成レトロとかいう甘っちょろいやつとは別次元。

小中高もっと言えば大学時代まで射程圏内に入ってしまうほど、五臓六腑に響くものがあった。

 

1. ルックバックfreestyle (Prod. by ORKL)

これは藤本タツキの「ルックバック」を意識したものだろうか。

よくわからないが、とにもかくにもビートがいい、まじでそれに尽きる。

おれは自他共に認めるビート至上主義者なので。

○○freestyleって曲名ちょっと前に流行ったよね。(ソースはない)

 

2. 「プールに金魚を放して一緒に泳げば楽しいと思った。」 feat. 加奈子 (Prod. by RRAREBEAR)

おれはプールに金魚を放して一緒に泳げば楽しいとは思わないが、プールに金魚を放して一緒に楽しく泳いでる人を見ていたい。

音楽ってのはアーティストの作品を享受するだけのもの、作り手と受け手が完全に隔絶されてる。

それはアーティストの遠い世界観に思いを馳せたり、はたまた親近感を覚えて励まされたり、受け取り方は自由だ。

この曲はいい意味でリスナーを置き去りにする。

まるで、授業中にほかのクラスのやつがプールでさぼってるのを窓から眺めてるような感覚。

 

3. summer haze (Prod. by sammyboy)

この曲あたりから(おれの)様子がおかしくなる。

平成の呪いの足音が聞こえてくる。

おれの中ではskitに近い役割の曲だが、あまりにも頭に残る。

飛ばされない、否、飛ばせないskit。

ここで捕捉された平成キッズはもう後戻りできない。

 

4. 冴島さなぎ「We Are Alive」 CM SPOT

おれは野崎りこんをよく知らなかったため、この冴島さなぎという概念(?)もよく知らなかった。

過去の歌詞の中で存在だけは言及されてたらしく、今回初めて顔と音声が肉付けされたとのこと。

本来これがskitなんだろうね、おれの中ではむしろ次の曲の1部って感じだけど。

この冴島さなぎのWe Are Aliveという曲がリリースされるのは事実なのか、それらすべて架空なのか。

 

5. 50077 gecs feat. 冴島さなぎ (Prod. by Rinne)

言うことなし、今回のEPで1番好き。

 

6. MEMORIES feat. e5, Nosgov (Prod. by Christian Pitts)

野崎りこんってラッパーは女性アーティストとの相性がいいんだね。

むしろ今回は男性アーティストを客演に入れなくてよかったと思う。(結果論だけど)

この曲聴いて思ったのは野崎りこんラップうめーなって。

このフローはまじでラップがうまくないと成立しないのよ。

たまに野崎りこんをポエトリーリーディングっていう人いるけど、それは近からず遠からず。

歌詞はもちろん、レコーディングする中で日本語の発語とか抑揚とか文章の構成とか、たぶん死ぬほど試行錯誤してると思う。

 

7. GTA's Easter Eggs and Some Nostalgia (Prod. by sammyboy)

しれっとこういう曲を入れちゃうんだよな~、憎いね。

3曲目の"summer haze"と一緒で、散らかってるんだけど整ってる。

往々にしてラップってのはそういうものなんだけど、野崎りこんはそこに情緒がある。

おれ的には塊魂みたいな感じ。(伝わらんか)

野崎りこんっていう本体があって、淡々としたフローで進んだり戻ったりしながら、身の回りのあらゆる要素を絡めとって大きな1つになっていく。

それは曲の中でもそうだし、アルバムやEP全体の中でもそう。

野崎りこんってラッパーは癖が強い印象があったが、彼は案外無色透明で、環境の変化に適応する能力が高く、繊細で柔軟性の塊なのかもしれない。

 

8. 夏の扉 (Prod. by ORKL)

ちょっとこのビートメーカー呼んでくれ、久石譲に会わせてくるわ。

最後にこういうことするやめてくれ、ノスタルジーで死にそうになる。

なんかよくわからんけど、サカナクションの『834.194』、もっと言うと"ワンダーランド"を思い出した。

歌ものっていうと安易に聞こえるけど、こんなフローもできるんですね……。

降参です、まいりました。

 

結局、野崎りこんというラッパーをおれなりに論じてしまった部分があって申し訳ない。

とりあえず、ことしの夏はこれで乗り切る。

バカみたいなこと言うと、冬をテーマにしたEPも聴いてみたい。

でも冬って共感性って意味では実は難しいんだよね~、夏と比べると「あるある」みたいなやつが少ない。

まあでもそれはそれ、おれはただ、野崎りこんというフィルターを通した季節をまた拝みたい。

 

www.ourlanguage.net

 

あと余談なんだけど、今回のEPを聞いて改めて認識したことで、このサブスク時代においてアルバムという単位はもはや意味を持たないのではないかと。

だいぶ暴論だし極端だから一概には言えないけど、アルバムくらいの長編作品を頭からお尻までぶっ通しで聴く文化は終わった気がする。

よくてEP、これくらいがちょうどいい。

ストーリーテリング要素を失った(というかリスナーが見出してない)昨今のアルバムは、もうただの楽曲の寄せ集めでしかない。

アーティストもそれを許容して、曲がMVの再生回数と連動して単発で評価される風潮が当たり前になってる。

平成キッズとしては悲しいことだけど、それもまた時代の流れ。

今後、まじでCDという媒体は姿を消すだろうけど、それでも野崎りこんの『We Are Alive EP』みたいに、ストーリーテリング(とはちょっと違うか?)という文脈を忘れない作品が、日本語ラップでも生まれ続けることを祈るばかり。