僕には忘れられないラッパーが一人いる。
秋がよく似合う青と橙のMr. Wonder、横浜・藤沢を拠点に活動するZZ Productionの一員でもあったOrganという男だ。
今でもふと彼のラップを無性に聴きたくなる瞬間がある。
まずは彼の楽曲を僕の知る限り紹介したいと思う。
ディスコグラフィ
2000年 ♪なに(What What) / Organ [Chill Side 2 Meltingpot / V.A. 収録]
2002年 ♪Bisque Orange / Organ [Yokohama Under Ground / V.A. 収録]
2004年 ♪A Night In Bombay Feat. Organ, Takatsuki / Romancrew [Fly High 収録]
2005年 ♪兵隊はアンドロメダ Feat. Organ / Steruss [白い三日月 収録]
♪Bonus Track Feat. ZZ Production / Steruss [白い三日月 収録]
2006年 ♪Smile / Organ [184.045Style Mad Sampler 2006 / ZZ Production 収録]
2006年 Orange and Blue Invitation / Organ
2006年 ♪Re: Yokohama DJ Bolzoi Remix / Re: Yokohama All Stars [Re: Yokohama / V.A. 収録]
2010年 ♪184045 -トラトラトラmix- / ZZ Production [ZZ 収録]
Organというラッパー
僕が初めてOrganを耳にした楽曲はSterussの‟兵隊はアンドロメダ”だった。
「何だこのラッパーは」と衝動的にCDコンポの再生を止めたのを覚えている。
Nice & Smoothとはこういうフロウを言うんだな、と思った。
それからというもの、Organの音源をありとあらゆる手段で集めた。
僕がOrganを知った時点ではもう既にZZ Productionに籍はないようだった。
横浜出身らしい、今は仙台にいるらしい、現役は退いているらしいなど、しがないリスナーの一人でしかない僕では拾える情報もごくわずかで、2019年の今となっても定かな情報は得られていない。(数年前、サイプレス上野に会ったときに聞いておけばよかったと猛省している。)
といった感じで、如何せんバイオグラフィが曖昧なため、ここからはOrganのラップに少し触れてみたい。
普通のことかっこよく書ける
Organは‟184045 -トラトラトラmix-”の中でそう歌っている。
Night Camp Clickの‟Night Simphony”でFuku Del Toroが歌っていた、
普段着で歌う明日の日常
というラインにも通ずるものを感じるが、これこそラッパーの真理だ。
確かにロマンティックで気障なセリフは吐けども、特別なメッセージを謳っているわけではなく、故に耳にスッと馴染む。
Organの特徴は何といってもその男前な歌声と色気あるフロウだが、これだけ聞くとつい元Romancrewの将絢を思い浮かべてしまうものの、彼のそれとは似て非なるものである。
現にRomancrewの楽曲に客演していたり、自身のEPでも将絢を客演に招いていたり、自他共に親和性を感じていたようだが、これがなかなかどうして具合がいい。
Organはソロ、客演、ポッセカット、いずれのパターンでも自身の魅せ方をよくわかっているラッパーだ。
再熱
僕のOrgan熱も若干落ち着き始めた頃、とある楽曲によってその熱はぶり返された。
それはHaiiro De Rossiの‟Forte”という楽曲だ。
曲の終盤でこんな歌詞が現れる。
大好きな曲のフレーズが過る ‟お前との時間がプライドだ”
「んあっ!?」と思わずCDコンポの再生を止めた。
この歌詞はOrganの‟夕方soul”のものだ。
大好きなラッパーと大好きなラッパーが僕の中で繋がった瞬間、得も言われぬ喜びを感じた。
思い返せば、Haiiro De Rossiは‟月光睡蓮”の中でも、
ZZに憧れ作ったCrewは解散した今も根っこのBlues
と歌っていたし、地元も近いし、Organとの共鳴は当然と言えば当然の道だったのかもしれない。
そして、Haiiro De Rossiの最新作『Rappelle-toi』にもOrganオマージュがあった。
Organの最初で最後の作品集『Orange and Blue Invitation』を意識したカラーリングがされており(本人確認済み)、これを目にした瞬間、「やってくれた!」と嬉しくなった。
テーマ、言葉、フロウ、音楽性、それぞれ全くの別物ではあるが、Organイズムを精神的サンプリングというまさしくヒップホップ的な手法で継承しているラッパーはHaiiro De Rossiただ一人、と僕は勝手に思っている。
そして先日、思いがけずOrganの名とレア音源を耳にした。
PunpeeとOrganにも多少なり接点があったというのも興味深いが、Organの音源の中でも一二を争うほど入手困難な‟Bisque Orange”をPunpeeが流したことが感動モノ。(ラジオの中では「ビスコオレンジ」と言っているが、正確には「ビスクオレンジ」だった気がする。)
そんなこんなで2019年の今、僕の中でOrgan熱が再び上昇中なのである。
まとめ
本音を言えば、一曲一曲を似非評論家よろしくレビューしていきたいところだが、どこの馬の骨ともわからない奴の拙い感想文に需要がないことは僕自身一番よくわかっているのでやめておく。
Organというラッパーに興味がある人、あった人、これから知る人、、、誰かがインターネットの海で数少ない情報を頼りにOrganをディグる際の少しでも助けになればと思う。
この時代、手段を問わなければ音源を手に入れることはできると思うので、もし僕のような熱病に罹ってしまった患者の方は諦めずに探し回ってほしい。(僕は全てフィジカルで入手したい末期症状だったため相当に苦労した。)
また、僕が知らないOrganの音源や、Organにまつわるエピソードなど、どんな些細なことでもいいので情報があれば教えてほしいし、同士がいれば一緒に話したいので、コメントを残してくれるとありがたい。
余談
『Orange and Blue Invitation』の盤面に音源収集家は生唾モノの‟Promotional Use Only”の文字が刻まれているが、ディスクユニオンで販売されていたようだし、どういった意味なのかずっと疑問に思っている。
そしてこのEP、将絢が手掛けただけあってCD-Rにもかかわらずご丁寧に歌詞カードまでついておりさすがの一言。
夏の終わりから秋にかけて一人でゆっくり聴き流したい作品だ。